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THE GREATEST SHOW-NEN第10回公演【HAPPY ENDie】考察+感想

2月19日(土)0:45放送回をもってTHE GREATEST SHOW-NEN第10回公演【HAPPY ENDie】が終幕!

ミステリー好きな私にとってすっごく面白い舞台でした!素敵な作品との出会いに感謝です!今回はこの物語全体の考察と感想をまとめてみました。

 

物語がどう進むかの過去の考察はこちら:

THE GREATEST SHOW-NEN第10回公演【HAPPY ENDie】考察 - 晴れ舞台はいつも雨

THE GREATEST SHOW-NEN第10回公演【HAPPY ENDie】考察 《第2弾》 - 晴れ舞台はいつも雨

THE GREATEST SHOW-NEN第10回公演【HAPPY ENDie】考察 《第3弾》 - 晴れ舞台はいつも雨

考察

ジンタはロングコートの男の願望/理想?

「作者は自分より賢いキャラクターを描けない」という言葉をちょうどグレショー見終りのタイムラインで目にした。

この言葉は「知識は執筆しながら調べれば頭に詰め込めるけど、賢い人の思考回路が分からないから自分より賢い人を描けない」という意味と仮定した場合、作者は自分より幸せな人や幸せになる物語の事も描けないという構図も成り立つのでは。そしてHAPPY ENDieという物語そのものがその象徴なのでは?

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作者(ロングコートの男)も本当は幸せな物語が書きたいけど、書けないのかなと最後の苦しそうに「役が勝手に幸せになってるんじゃないよ。俺を置いてさ。・・・こっちはこれからも続くっていうのに。」のセリフを聞いて思った。

何度改稿しても、モトムが話を変えようとループしても、何をしても必ず悲劇を起こすキッカケとなる犯人が1番ロングコートの男と近いのかもしれない。

SNSで見る周りの華やかな生活に翻弄され、何か成し得ようとした形跡が残る部屋。あれは犯人の部屋であり、ロングコートの男の部屋の描写なのかもしれない。

幸せな物語を願っても悲劇しか書けない作者。警官が1番哀れなのは彼(犯人)だと思うと言ったけど、1番哀れなのは作者だと私は思う。

本当は幸せな物語を書きたいけど自分には幸せな終わりを迎えるためにどんな行動を取ればいいか分からず、気付いたらジンタを創り出していた。自分の代わりにジンタにハッピーエンドに連れて行って欲しくて、自分はジンタになりたくて自分と同じ白い腕時計を着けさせる事で俺はジンタなんだと暗示をかけたのかも。

モトムも確かにユウキを救おうとハッピーエンドのために行動するが、それはジンタの殺人依頼という結局は誰かが悲しんでしまう終わりを迎える筋書き。ロングコートの男の思考回路ではどうやってもハッピーエンドを迎えられる筋書きが作れなかった。だから急に主人公を変え、ジンタが創られた。

「初稿を超えよう」と物語と現実世界の間の壁を壊そうとしている時、ジンタや警官のセリフは「初稿を超えよう」なのに対して、モトムは「虚構を超えよう」と言う。ロングコートの男がジンタと対峙した時も「虚構へ帰れ」と言う。モトムは結局ロングコートの男が作り出した虚構の世界から出る事は出来ないし、ロングコートの男の思考回路内でしか行動が出来ない。だからこの2人だけが物語の世界を「虚構」と呼んでいるんだと思う。主人公がモトムからジンタに変わったのはロングコートの男が自分の思考回路内に留まっている主人公(モトム)ではハッピーエンドを書けなくて、だけど書きたくて作家が葛藤したからなんだと思う。

登場人物の名前について

モトムがユウキが死なない結末を求めたからモトムという名前。

ユウキは親友をコンビニで助けた勇敢さからユウキという名前。

と言う考察を過去にしたが、その時どうしてもその理論で行くと名前のある最後の1人、ジンタの名前の由来がわからなかった。だけど、ジンタがロングコートの男の思考回路にハマらない行動を取る登場人物だからこそ、あえて名前に意味がないのかもしれない。と言うよりは、自分を超えて欲しいと願ったからこそ、意味を込めた名前を付けなかったのかもしれない。

そして犯人。ユウキを刺すと言う物語の中で大きな役割があるだけではなく、キャラクターの背景まで書かれているのに名前がないのが疑問だった。もしかしたら犯人の内面が1番ロングコートの男に近いからこそ、作者は名前を付けれなかったんじゃないかな?自分を投影しているから、自分に似ているからこそ名前を付けれなかった。まだ何も成し得れていない自分を投影した、悲劇の引き金を引く登場人物に名前をつけてしまうと自分は自分が作り出した犯人という登場人物以上の人間に現実世界でなれないと怯えたからこそ、ロングコートの男は犯人に名前が付けられなかったんだと思う。

ジンタ達の物語はどう終わるのか

私はロングコートの男はこの物語を書き上げないと思う。正しくは今の彼には書き上げられないんだと思う。だから登場人物達がパントマイム達をペンで刺し、自分たちで物語を乗っ取ったのを現実世界からただただみている事しか出来なかったんだと思う。

いつか現実世界でもロングコートの男が幸せだと感じれる日々が訪れ、モトムやジンタにとってのユウキのような守りたい相手ができない限り、ジンタに託したハッピーエンドは彼には書けない。それを自分でも分かっているからこそ執筆用のPCをジンタに持っていかせたんだと思う。作家にとって自分の物語を生み出す道具を人に簡単に渡すなんてしないと思う。けど今の自分の創作を超えるためにはジンタに託すしかないと思ったのでは?だから奪い返そうともせず、ジンタにPCを持って行かせた。そして自分が望んでいるようなハッピーエンドを書けるようになったら、ジンタ達の物語を終わらせ、ジンタが持っていったPCを自分の手元に戻して新しい物語を書き始めるんだと思う。

感想

とにかく面白かった!今回の作品は連ドラのように1週間たくさん考察する時間がある事で、より楽しめた作品だと思う!せめて私はそのおかげですっごく楽しめた!あーだこーだ考えてはまとめたり、他の方の考察を読んではまた自分でも考察を重ねたりというプロセスと時間がより物語を膨らませてくれた。

そのプロセスを繰り返したからこそ全編見終わった時、上に書いた考察が出来たんだと思う。1本通しで観たら細かい考察ができなかったと思う。もちろん1本通してみたら、その時はその時できっと驚きや別の考察が産まれていてそれはそれで十分に楽しめたとは思うけど。

今回の物語は当て書きで作って下さった台本だけど、本当に役と演者が合っていて、だからこそセリフも説得力があるなと思いました。

ユウキを助けに何度でも行くさと言うシーンやモトムに「ありがとう」と言えるのもこじけんだからだなってすごく思った。特にモトムに自分を殺そうとした事を知った上で心からありがとうって素直に言えてそこに嘘がないのはこじけんだからこそ。

犯人が原稿を見て、何度も殺人を繰り返すのは自分のせいじゃなかったんだ!ほら!って警官達に笑顔で原稿を見せるシーンも大晴のいつもの晴れた太陽のような笑顔があるから、犯人は何度も刺してしまう自分に苦しんでいたんだなってより思えた。

ユウキの何度ももがいて足掻いてまで救いたいと思わせる愛され力は晶哉そのものだった。

誠也くん演じたモトムの感情が爆発するシーンは圧巻だった。愛おしそうな声と顔でユウキと話し、その後ユウキに忘れられてしまう現実を口にして悲しみ、ジンタに怒り、犯人に迫り、切なそうにもう疲れたと弱音を吐くあの感情のローラーコースター。あのシーンで誰もがモトムに寄り添いたくなったんじゃないかな。

リチャくんはSuper Wednesdayの時も言われてたけどやっぱり声がいい!パントマイムシーンのダンスは予想通り視線泥棒でリチャくんにしか目がいかなったけど、それよりも原稿を読み、物語の枠をジンタとモトムと進んでいくシーンでリチャくんの声ってやっぱり魅力的だなって思った。すっと心に届くというか、ただ聞き取りやすいんじゃなくて物語に優しく導いてくれる感じがした。

正門くん演じるロングコートの男の最後のシーン。セリフは少ないのに声に悲しさや弱々しさが感じられて冒頭で書いた考察がガーッと一気に書き進められたのはそれだけあの短いシーンで感じ取れたからだなと思う。影のあるというか哀愁のある役が似合うなってやっぱり思う。ウェットな感じがすごく似合う。

あと、今回からはTwitterでも本編に入りきらない裏側を見せてもらえて、普段どんな雰囲気で稽古してるのかとかスタッフさん達とみんなで一つの舞台を作り上げてるんだなっていうのがより知れて嬉しかった。大晴の個人稽古の時に壱劇屋の方が鏡の前で自主練してる姿や、本番の袖でのスタッフさんと演者のやり取りとか見れた事でAぇ! groupは今、本当にありがたい環境でたくさん成長できてるんだなと嬉しくなった。周りの人たちが本気でAぇ!と向き合って共に創造してくれているこの番組に改めて感謝です!

あとはやっぱり、毎公演そうだけど、Aぇ!も公演毎にどんどん成長しているんだなって稽古部分で今回も感じられた。過去の作品で指摘されていた事が生かされているのを観れるのもこの番組ならではだなと思った。

1番のサンキューで大晴が稽古であまり冒険していないと指摘されていたのが嘘のように今回は最初からフルスロットで振り切って演じてそこから余分な部分を削ぎ落として行ったり、霊霊でのセリフ被せが原稿を読むシーンで応用されていたり、チャーハンさんに各キャラの過去の設定を考えてと言われていたからこそ晶哉がユウキとジンタ、モトムとの関係性に気付けたり。本当に今までの舞台全てが生きているんだなって感じた。

第10回公演もお疲れ様でした!素敵な作品にありがとう!そして第11回公演は久しぶりのコメディ!楽しみです!